2015年5月
湿原の春
この情報欄でも最近は同じような表現ばかりですが、気象や季節の移り変わりがとても読みにくくなりました。
今年の春は、私の季節暦の感覚からすると、およそ半月くらい季節の進み具合が早いように感じています。
あの雪の降り方と、積雪量は遠い遠い昔の出来事のようです。
高い稜線や沢筋を除くと残雪もほとんどなくなり、林床ではスプリングエフェメラル達が既に満開から結実をむかえていますし、草原でも小さな花たちがいっぱいです。
そんな中、この時期はやはり湿原の花たちがとても目立つので良く目を引く存在です。
その代表例は誰もが知るミズバショウですが、湿原にはミズバショウ以外にも沢山の花たちが咲き競っています。
全国各地にミズバショウの有名なところがありますが、大抵そういったところは、ミズバショウと同じくらい人の数も多いものですが、志賀高原の湿原はこの時期とても静かで、広い湿原を独り占めできるような瞬間も沢山あります。
スキーヤー・スノーボーダーの目線からすると、冬の間何回も滑走していた雪の下が、ミズバショウの大群落などという個所がいたるところにあります。
上高地の植生
上高地に来ています。
好天に恵まれた上高地は大変な人の多さで、毎回のことながら驚かされます。
梓川のほとりから見上げる穂高連峰の景観は、
「ここは日本か!」
と、ガーラントやウェストンと同様の感嘆を覚えます。
沢山の方が訪れる理由は頷けます。
一方で、研修をしているせいなどもあり、周囲の植生や自然の変遷や多様性をみると、大正池の浚渫、梓川の堤防、植林のカラマツ、ケショウヤナギなどの川辺林等、本来の自然植生からすると、あまり自然度の高くない上高地の自然にも気付きます。
今ではすっかり定着している、写真の“小梨平”の地名のコナシ(ズミ)も元々はここにあった樹木ではなく、明治以降人が持ち込んだ樹木でもあります。
まあ、あんまりそんな“斜め的視線”で見るだけではなく、背景の穂高連峰と満開の白い花の景観を、純粋に楽しみたいとも思うのではありますが。
国内第一級といわれるこの地で、あるがままの自然の姿とは何か、自然を保全するということと利用すること、等々結論の出にくい問題を頭の隅で考えながら研修を行っています。